Q
成年後見とはどんな制度ですか?
A
 認知症や知的障害などが原因で判断能力が不十分な人は、自分では不動産や預貯金などの財産を管理したり、事業者と介護などの契約をしたり、遺産分割の協議をしたりすることができない場合があります。また、契約の内容が判断できずに、悪質商法の被害に遭うおそれもあります。
 そのため、本人が単独で有効な契約などを行う能力(行為能力)に一定の制限を加えると共に、その人を法的に支援する人を家庭裁判所で選任する制度が成年後見制度です。
 なお、詳細についてはこちらをご覧ください。
Q
成年後見制度にはどんな種類がありますか?
A
 広い意味での成年後見制度には、対象者本人が認知症などの理由により判断能力が低下してしまった後で、家庭裁判所に申し立てて後見人等を選任してもらう「法定後見制度」と、対象者本人がまだ判断能力があるうちに、将来自分が認知症になってしまった際の財産管理をしてもらう人と契約しておいて、実際に本人が認知症になってしまった後には、その人に財産管理を任せるという「任意後見制度」の2種類があります。
 また、「法定後見制度」には、対象者の認知症の程度によって、「成年後見」「保佐」「補助」の3つの制度にわかれます。
 なお、詳細についてはこちらをご覧ください。
Q
成年後見(保佐・補助)制度を利用するには、どのような手続きが必要となりますか?
A
 申立人や申立の区分(後見・保佐・補助)、成年後見人等の候補者を決めたうえで、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、申立書や一定の添付書類を提出する必要があります。
 申し立て後は、家庭裁判所によって、申立人や成年後見人等の候補者に対する事情聴取や、本人の状況確認が行われます。
 家庭裁判所による審判手続きが完了すると、申立人と後見人に対して、家庭裁判所から審判書が送られてきます。審判書を受け取ってから2週間が経過すると、審判書の内容が確定し、東京法務局で後見(保佐・補助)の登記がなされます。
 なお、詳細についてはこちらをご覧ください。
Q
成年後見(保佐・補助)開始の申立手続きには、どのくらいの期間が必要ですか?
A
 個々の案件によって異なりますが、成年後見(保佐・補助)の申立については、申立書の作成や添付書類の収集などの準備期間で約2~3か月、家庭裁判所に申し立ててから選任審判が確定するまでにも約2~3か月の合計で約4か月~6か月はかかります。
Q
成年後見制度を利用する場合、費用はどのくらいかかりますか?
A
 法定後見制度、任意後見制度を利用する場合に必要は諸費用や、それらの手続きを当事務所に依頼する場合の報酬額については、こちらをご覧ください。
Q
成年後見人(保佐人・補助人)は、申立人が希望した人が選任されますか?
A
 成年後見(保佐・補助)の開始申立書には成年後見人(保佐人・補助人)の候補者を記載する欄がありますが、ここに記載した人が必ず家庭裁判所に選任されるとは限りません。その候補者が不適格と判断された場合や、親族の中からその候補者が後見人等に選任されることに対しての反対意見が出たような場合、管理する財産が高額になるような場合には、候補者以外の人物(弁護士や司法書士などの専門家)が後見人として選任されたり、候補者以外に専門家も共同後見人等として選任されたりすることがあります。
 また、当初は弁護士や司法書士などの専門家が後見人に選任されたうえで、本人の財産のうちのまとまった金額を裁判所の許可がないとおろせない特殊な銀行口座に預け替えをしてから、親族等に後見人を引き継ぐという方法をとる場合もあります(後見制度支援信託)。
 なお、本人が、自分が将来的に認知症等になって判断能力が低下した際には、ぜひこの人に財産管理を任せたいという人がいる場合には、判断能力があるうちに、その人と任意後見契約を結んでおくという方法があります。任意後見制度についての詳細はこちらをご覧ください。
Q
成年後見人(保佐人・補助人)は、どのような仕事をするのですか?
A
 本人の財産管理や身上監護を行います。具体的には、本人の預貯金や現金・不動産など本人の資産の管理をし、入出金のチェックなどをして収支の管理をします。また、医療費や介護費、税金や光熱費などの費用を支払ったり、年金などを受け取ったりします。
 また、本人の健康状態や生活状況に変わりがないか、何か手当する必要が生じてないかを確認し、必要に応じて通院や入院、通所介護や訪問介護、入所介護などの契約を行います。
そして、これらの業務内容を定期的に家庭裁判所に報告します。
 なお、詳細についてはこちらをご覧ください。
Q
成年後見人(保佐人・補助人)の報酬はどのくらいですか?
A
 まず、前提として、成年後見人(保佐人・補助人)の報酬額は、自分達で勝手に決めることはできません。これは、本人の同意があっても同様です。成年後見人等の報酬額は、成年後見人等が家庭裁判所に対して報酬付与申立を行って、その審判によって決定されます。
 報酬額は、家庭裁判所が本人の財産の金額や、成年後見人等が行った仕事内容などを総合的に考慮して決定されますので、一概には言えませんが、一般的には年間で20万円~60万円程度といわれています。ただし、成年後見人等が本人の代わりに遺産分割協議を行ったり、不動産の売却を行ったり、裁判や調停を行ったりしていた場合には、その労力や獲得した財産の金額に応じて、報酬が加算される傾向があります。
 一方、任意後見の場合は、あらかじめ本人との間で行った任意後見契約によって、報酬の有無や報酬額が定められていますので、その内容に従って任意後見人が本人の財産から報酬を受け取ることになります。
Q
成年後見人(保佐人・補助人)の任期はいつまで続きますか?
A
 成年後見人等の任期は、原則として本人の判断能力が回復するか、もしくは本人が死亡するまで続きます。成年後見人等を途中で辞任するためには、家庭裁判所の許可が必要となります。
 なお、成年後見人等が本人よりも先に死亡してしまった場合や、破産して資格を喪失した場合、本人の財産を横領するなどして解任された場合、成年後見人等自身が加齢や病気、認知症等によって任務継続が難しくなり、家庭裁判所の許可を得て辞任したような場合には、本人についての成年後見(保佐・補助)そのものは終了せず、新たな成年後見人等が選任されることになります。
Q
成年後見制度を利用する際の注意点はありますか?
A
 成年後見制度は、本人の財産を保護するための制度です。そのため、本人について成年後見人等が選任されると、本人の財産を不当に減少させるような行為はできなくなります。
 例えば、相続税対策のため、本人の財産を本人が生きているうちに妻や子に生前贈与をして、なるべく減らしておきたいと思っていたとしても、それはできなくなります。
 もっとも、本人が認知症になる前から毎年少額のお年玉を孫に与えていたとか、継続的に孫の学費を支出していたというように、本人に贈与の意思があったことが明らかに推測されるような場合は、認められる余地はあります(家庭裁判所に事前確認が必要)が、そうした実績がない場合の贈与は認められないと思った方がいいでしょう。
 また、例えばある人の父が死亡した際の遺産相続で、母が認知症になっているために遺産分割協議ができないことから、母のために成年後見人を選任したとします。この場合、成年後見人は母の財産を確保することが任務となりますので、遺産分割では母に法定相続分相当の財産を相続させないと、協議が成立しないことになります。これは、もし母が判断能力を有していた場合には、子供に財産をすべて相続させたいと思っていたような場合でも同様です。
 このように、成年後見人等が選任されると、本人の財産処分の自由度は下がると言えます。
Q
成年後見人(保佐人・補助人)が本人の財産を使い込んでしまったらどうなりますか?
A
 成年後見人等が本人の財産を自分のために使い込んでしまった場合、まず、家庭裁判所から後見人等を解任されます。また、本人の親族や本人のために新たに選任された後見人等から、横領した金銭の返還や損害賠償の請求をされます。
 さらに、横領は刑法上の犯罪ですので、懲役刑や禁固刑、罰金刑などの刑罰を受ける可能性も十分にあります。これは、専門家などの第三者が後見人になっている場合はもちろんですが、本人の親族が後見人になっている場合でも同様です。
 とくに、本人の配偶者や子が後見人になっている場合、それまでは親族ということで財産管理がなあなあになっていたということはありえますが、後見人になった場合には、本人の財産は身内ではなく他人の財産と思って、自分の財産とは明確に分別して管理し、収支についてもきちんと管理しなければなりません。
Q
後見制度支援信託とは何ですか?
A
 後見制度支援信託とは、本人の財産のうち日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みのことです。
 後見制度支援信託を利用すると、信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするには、あらかじめ家庭裁判所が発行する指示書を必要とします。
 このように、後見制度支援信託は、ご本人の財産の適切な管理・利用のための方法の一つです。財産を信託する信託銀行等や信託財産の額などについては、原則として弁護士や司法書士等の専門職後見人がご本人に代わって決めた上,家庭裁判所の指示を受けて,信託銀行等との間で信託契約を締結します。
 ただし、後見制度支援信託は保佐、補助及び任意後見では利用できません。
 また、後見制度支援信託を利用して信託銀行等に信託することのできる財産は、金銭に限られます。不動産・動産は,後見制度支援信託を利用することを目的として売却することは想定されていません。また,株式等の金融商品についても,ご本人の財産の現状を大きく変更することになるため、個別の事案ごとに売却・換金をするかどうかを検討することになります。
Q
判断能力はあるけれど、誰かに財産管理を任せたい場合は?
A
 成年後見(保佐・補助)制度は、基本的に、本人が認知症などの理由によって判断能力が低下したあとで利用する制度です。また、申し立ての際には医師の診断書を添付しますので、診断結果が「判断能力は充分にある」となっていたら、利用できないことになります。
 また、任意後見制度では、任意後見の契約自体は、本人に判断能力がまだあるうちに行うことが想定されていますが、任意後見を開始させる段階では、本人の判断能力が低下した後で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てて行うことになります。その際には、やはり「判断能力が低下した」という内容の医師の診断書を添付することになります(任意後見制度についての詳細はこちらをご覧ください)。
 つまり、「頭ははっきりしているが体は不自由」というような状況で、誰かに財産管理を任せたい場合は、任意後見契約では役に立たないことになります。
 そのため、このような状況でも、信頼できる人に財産管理を依頼したい場合は、「財産管理委任契約」というものを結ぶ方法があります。財産管理委任契約とは、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理人を選んで具体的な管理内容を決めて委任するものです。また、家庭裁判所は関与しません。財産管理委任契約の特徴は、当事者間の合意のみで効力が生じることと、内容を自由に定めることが出来るということです。
 財産管理委任契約のメリット、デメリットは以下の通りです。
Q
自分が死亡した後の葬儀の手配や遺品の整理などを後見人に任せられますか?
A
 成年後見人(保佐人・補助人)の権限は、原則として、本人が死亡した瞬間に消滅します。これは任意後見人も同様です。そのため、基本的には、後見人等に自分が死亡した後の葬儀の手配や永代供養、遺品の整理などを任せることはできません。
 死亡した本人に親族がいれば、親族が葬儀の手配や遺品の整理などを行うことになりますが、身寄りのない方が亡くなると、自らの葬儀や埋葬、遺産や遺品の整理、病院や介護施設への未払金の精算、自宅の明渡しや処分などの「死後事務」を、誰に行ってもらうのかが問題となります。また、身寄りがある方でも、親族が遠方に住んでいたり疎遠であったりする場合や、親族の世話にはなりたくないような場合には、同様の問題が起こります。
 したがって、これらの死後事務を相続人以外の人に任せるには、あらかじめ「死後事務委任契約」を、その人との間で結んでおく必要があります。死後事務委任契約とは、葬儀や埋葬など、自分が死亡した後の様々な事務処理を委託する契約のことで、委任者が受任者に対し、これらの事務についての代理権を与え、死後の事務を委託する委任契約のことです。
死後事務委任契約でできること(例)
  • ①医療費の支払いに関する事務
  • ②家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務
  • ③老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務
  • ④通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
  • ⑤永代供養に関する事務
  • ⑥相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
  • ⑦賃借建物明渡しに関する事務
  • ⑧行政官庁等への諸届け事務
 それぞれを必要に応じて行うことも可能です。
 なお、死後事務委任契約を結ぶ際には、その死後事務に必要な費用や報酬をどうするのかという問題が生じます。費用や報酬を前払いしてしまうと、引き受けた人(受任者)がそのお金を持って逃げてしまったり、まじめに死後事務を行わなかったりする心配がありますが、死後事務は頼んだ人(委任者)が死亡した後に執り行われますので、委任者が受任者を監視することが出来ません。また、受任者の方が先に死亡してしまったらどうするのかという問題もあります。
 かといって、費用や報酬を後払いにしてしまうと、委任者が死亡した段階で財産が残っていなかったら、受任者は自腹で死後事務を行わなければならないことになってしまいます。
 そのため、死後事務委任契約については、例えば費用や報酬については信託制度を利用して、委任者の遺産とは別に保管しておくとか、遺言書と併用することで、遺言執行者に費用や報酬を遺産から支払わせるなどの工夫が必要となります。
※予約受付用です。お電話によるご相談は承っておりません。